2021-10-07

「~すべき思考」と自分探し

「~すべき思考」と自分探し

「自分探し」とは一時期よく言われた言葉です。本当の自分を見つけるために、諸外国を転々と旅しながら、どこかにあるはずの答えを探すといった小説やドラマも数多く作られたように記憶しています。

そういった欲求は誰にでも起こりえることですし、私自身も高校や大学の頃は自分が掴めなくて随分彷徨った記憶があります。モラトリアムの時期には誰もが通る道なのかもしれませんね。

でも今回お話しするのは、そういった一般的なお話ではなく、子供の頃の成育環境の影響で「~すべき思考」が身についてしまい、社会に出た後に生き辛い感覚に振り回されるような傾向を持つようになってしまったという人たちに向けての内容です。ですから、興味のある方はお読みくださいね。

本当の自分は存在するか?

「~すべき思考」が身につくと、感情は拒絶していたとしても、理性が「嫌だけどやらなければならない」という指令と共に感情に我慢を強いるようになりがちです。感情は長きに渡り抑圧されると次第に限界を迎えることになるので、人によっては急にキレたり、体調が崩れたり、精神に問題が起きることもありますから、「~すべき思考」があまりにも全般的に発動するようなら、改善することを考えてもいいタイミングです。

また、抑圧が続くと人は次第に自分が嘘をついている、あるいは演技しているような感覚に囚われるようになり、特に対人関係において居心地の悪さや、だましているような罪悪感に苛まれることもあります。しかしその傾向において一番辛いのは、あまりに感情を抑え続けた結果生まれる「すべきことはわかるけど、どうしたいのかはよくわからない」という感覚ではないでしょうか?

この「どうしたらいいのかわからない」という感覚は次第に「本当の自分がわからない」という悩みを生み出すことにもなります。そこで一部の人は「本当の自分を探したい」「本当の自分を見つけたい」といった欲求の高まりを迎えることになります。

ただ、ここで一つの疑問が生じます。果たして「本当の自分」は存在しているのでしょうか?もちろん感情を抑圧してきたことにより、本心や欲求がわからなくなっているとしたら、抑圧を外せばそれが表出する可能性もあります。そういう意味では「本当の自分」は存在していると言えるかもしれません。

しかし最近の研究で、人の気質や価値観の大部分は子供の頃の親子関係によって形成されるということがわかってきています。大まかに言うと、子供は空っぽな自分に、まず親の考え方や所作や価値観を入れて仮の自分を形成し、それをもとに様々な体験をする中で、改定や工夫を重ねながら「オリジナルの自分」を形作っていくということです。ですからベース部分で改定を加えていない箇所に関して「なぜか親に似ている※」ことがあるわけです。(※最近では脳のミラーリング機能による影響もあることがわかっています)

ところが、この時期に親の影響が強すぎると、改定や工夫を試すことができない場合があります。例えば日常的に監視されているとか、行動や選択を厳しく制限されている(あるいは良かれと思って自らしてしまった)などです。その結果「~しなければならない」が強く癖付けされれば、他の可能性を試すきっかけは生まれ辛い。そうなると、ある意味「親の思い通りの人生を歩んでしまう」ことになります。

その場合、本当の自分は感情の抑圧を取り除けば出てくるということではないでしょう。例え「我慢せねば」という感情を取り除いたとしても、ベースの部分が親の考え方のままなわけですから、本当の自分どころか、「~すべき」以外の方法が思い当たらないということになってしまうのも不思議ではありません。

そういった理由で、人によっては「本当の自分」がまだ存在していない(あるいは未成熟)可能性が考えられます。探しても見つからない理由の一つは、上記のような状況に起因するものです。

モデルケースを見つける

ただし絶望する必要はありません。研究では既にいくつかの対処法が考えられ効果も確認されています。自分の現在地を確認したら、自分探しではなく自分づくりに取り組んでみるのもひとつの方法です。

その一つが、ベースとして親を取り込む下りを参考にして考えられた「モデルケース」を見つけるという方法です。これは親以外で自分のベースになり得る人を探して一旦真似てみるという方法ですから、時間はかかりますが、着実に新しい考え方や価値観を経験を通じて取り入れることができると言われています。

実際には見つける前に「自己理解」の作業は必要になりますが、その過程で自分の感情はどんな対象にポジティブに反応するかがわかってきたら、早速モデル探しに取り組みます。やり方は【自分がいいなと思える考え方や生き方をしている人】を探して真似たい部分を真似るだけです。もちろん真似る過程では上手くいかないことも失敗することもあるでしょう。しかし子供は実際にそうやって自我を獲得していくわけですから、大人になった今も失敗も痛みも織り込み済みで体験を重ねることは必須になります。そういう意味では「痛みや辛さを避けて自分を再生したい」という方にはお勧めの方法ではありませんから、他の方法を検討してみてくださいね。(リフレイムでは他の方法は推奨はしていません)

対象にするのは実際の人間でなくともいいこともわかっています。例えばあなたの好きな小説やドラマや漫画の登場人物でも同様の効果が見られますので、そこはリアルな人間関係に不安を感じている方でも取り組みやすい部分といえそうです。

現在リフレイムには、自己理解プログラムを通じてこの取り組みと向き合っている方が多数いらっしゃいます。決して楽しいことばかりではありませんが、この作業を通じて自分の軸を作られた方の多くは「生きることの大変さは変わらないけど、以前より自分で判断できるようになったし、楽しいという感覚を初めて味わえるようになった」という感想をお持ちになられるようです。

この機会に皆さんも「モデルケース」になる人を探して、「本当の自分」を構築してみませんか?

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