2024-02-23

正しい親より、理解する親へ

1. 埋まらない「愛情の溝」

私のカウンセリングルームでは、親子関係の葛藤を抱えた多くの方とお話しします。 子供側の方は、「親にただ理解してほしかった」と静かに語ります。一方で親側の方は、「あんなに愛情を注いで育てたのに、なぜ」と、戸惑いを隠せません。

どちらも嘘をついているわけではありません。ただ、「親が与えた愛情」と「子供が求めていた理解」が、うまく手渡されなかっただけなのです。

2. 「この世界にいていい」という静かな自信

発達心理学でも、幼い頃に「分かってもらえている」という安心感を得ることが、その後の人生の土台になると言われています。 それは、「良い学校に入る」といった外からの評価とは比べものにならないほど大切な、「自分はここにいていい」という許可証のようなものです。

この安心感という「錨(いかり)」がないまま社会へ出ると、人は常に「正解」や「他者の評価」を追い求め、自分を削り続けてしまいます。 うつや生きづらさを抱える方の多くは、外側の正しさで自分の価値を証明しようとして、力尽きてしまっているのが現状です。

3. 親の役割は「正しさ」ではなく「理解すること」にある

親の本当の役割とは、子供を「正しくコントロールすること」ではないと思います。 子供の言葉や沈黙、あるいは不可解な行動に対して、自分の価値観を脇に置いて「どうしたの?」と誠実に向き合うこと。それだけでいいのです。

100%理解できなくても構いません。「あなたのことを理解しようとしているよ」という姿勢そのものが、子供にとっての最大の支えになります。不完全なままで、ただ目の前の存在に実直に応じ続けること。それが、親としての最も誠実な仕事ではないでしょうか。

4. 愛情を「届く形」で手渡すために

「あなたのために」という言葉が、時に子供を追い詰めてしまうことがあります。愛情があることと、その愛情が相手に届くことは、別の問題なのです。

もし今、お子さんとの関係に難しさを感じているなら、一度「正しく育てる」という物差しを置いてみてください。そして、ただ子供の話を聴き、その「物語」を一緒に受け取ることから始めてみませんか。

親子という長い旅路の中で、すれ違ってしまった糸をほぐし、もう一度穏やかにつながり直すためのお手伝いを、いつでもさせていただきます。

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