考え事が止まらないとき|身体から心を緩める方法
以前執筆したマインドフルネス・過緊張に関する記事を、2026年現在の視点から加筆・再編集しています。
頭を空っぽにするのが苦手な人たち
「もっと肩の力を抜いて、リラックスしよう」
周囲からそんな風に言われたり、自分でも「よし、今日はゆっくり休むぞ」とベッドに入ったりしたのに、結局うまく休めなかった――という経験はありませんか?
静かな部屋で横になっているのに、頭の中では「明日の仕事、どうしよう」「あのとき、なんであんなことを言ってしまったんだろう」と、嫌なことや不安が次から次へと溢れ出してくる。まるで頭の中で会議がずっと続いているような状態です。
「思考を止めて、リラックスしたいのに、どうしても上手くできない」
カウンセラーとして、まるで自分はできているかのように書いていますが、実は私自身、昔からとにかく雑念が多く、周囲の空気を過剰に読みすぎてしまう子供でした。大人になってこの傾向を何とかしようと、当時流行していた瞑想をしようと試みたこともありましたが、どうしても頭の中がざわざわしてしまい、自分の呼吸に集中することなどできないな…というお手上げ状態だった頃があります。
そんな風にリラックスしようとすればするほど、逆に緊張したり思考がグルグルしてしまう。そんな誰にも分かってもらえない生きづらさを抱えているのなら、まずお伝えしたいことがあります。
なぜ、休もうとするほど緊張してしまうのか?
なぜ、ただ横になって目を閉じているだけなのに、嫌なことばかりが頭をグルグルと支配してしまうのでしょうか。
その理由は、人間の脳の仕組みにあります。私たちの脳は、機能として何かを「しない」という禁止の命令を理解するのが、とても苦手な上に、それを余計に意識してしまう傾向を持っています。例えば「食べ過ぎない」「考えない」と強く念じるほど、逆に脳内は「食べること」「考えること」のイメージでいっぱいになってしまうということです。
つまり、頭の中を「空っぽ」にしようとする引き算のリラックス法は、脳の構造上、非常に難易度が高いことなのです。
ただし、この「ぐるぐる思考」は、弱さゆえの反応ではありません。傷つかないために先回りして不安を予測する、脳の「防衛戦略」です。子どもの頃の環境に適応するなかで、少しずつ身についてきた思考の癖といえます。
もし、あなたの成育環境が精神的に過酷なものであったなら、なおのことでしょう。脳はあなたを生き残らせるための方法として、この「不安予測」という技術を身につけさせたはずです。
だからこそ、無理に止めようとする必要はありません。「考えちゃダメだ」と自分を責める必要も、一切ないのです。
では、このままの状態で、どうやって休めばいいのでしょうか。ぐるぐる思考が止まらないとき、ただ横になるだけでは心の緊張はなかなかほぐれない——そう感じたことのある方は、多いと思います。
頭から身体へ、意識をずらす
ぐるぐる思考から抜け出して心身を緩めるには、脳の仕組みをうまく使う方法があります。
それは、頭を空っぽにしようとする「引き算」をやめて、「別のことに意識をずらす」足し算の発想に切り替えることです。考えることを頭の力で止めようとしても、うまくいかない。だからこそ、頭ではなく「身体の感覚」へ意識を移すことが有効になります。
私の場合は、その切り替えになってきたのが趣味の山歩きです。
月に2回ほど山に出かけるのですが、登り始めはざわついていた気持ちが、一歩一歩と進むうちに、少しずつ落ち着いてきます。険しい道を登っているとき、他のことを考える余裕は自然となくなっていく。「今日は体が重いな」「どこに足を置こう」と、意識が自然と身体の感覚に向かっていくからです。
都会にいると、頭を休めようとしても、気づけばスマートフォンに手が伸びていたりします。でも、自然の中で身体を動かしていると、登山道脇の小さな花、鳥の声、肌をかすめる風といった五感への刺激が増えていきます。
頭の中で煮詰まっていたことが、相対的に小さく感じられてくるのは、そういう理由からだと思っています。
歯を磨くだけでいい夜もある
とはいえ、心も体も弱り切っているときに、山に登ることはもちろん、「歩くのがいい」と分かっていても動けないことはあります。そのことで自分を責める必要は、全くありません。
完璧に元通りにならなくていいのです。大きな一歩を踏み出す前に、まず日常のなかの「ほんの小さなケア」を、時間をかけて少しずつ積み重ねるだけで十分です。
たとえば、夜、無心になって歯を磨くこと。
これは単なるルーティンではありません。丁寧にお風呂に入る元気がなくてもいい。ただ歯を磨く。シャカシャカという音、歯磨き粉の感覚、口に含む水の冷たさに、ほんの1分だけ意識を向けて感じてみる。それだけで、今ここにある自分の身体を、ちゃんとケアできています。
最初は、5分でいいのです。好きな音楽をイヤホンでじっくり聴く、温かい湯船に足を浸してじんわりする感覚を味わう、お気に入りのコーヒーを淹れてその香りをゆっくり嗅ぐ。そんな時間を、暮らしの中に少し加えてみてください。
もし一人ではどうしても切り替えられないとき、不安な想像が止まらないときは、いつでも頼ってください。あなたの心と身体が少しずつ緩んでいけるよう、一緒に考えていきます。
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⇒【他人にイラッとする時|心のマイルールを緩めるために】
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