2026-06-09

自分を後回しにする時|自分の本音に気づくために

以前執筆した「正しさへの囚われ」や「役割の重圧」に関する記事を、2026年現在の視点から加筆・再編集しています。

自分を追い詰める、正しさのルール

何かを正しいと信じ、誠実に生きようとすることは、本来とても大切なことです。

ただ、日々のカウンセリングの中で自己否定の強い方とお話ししていると、その生真面目さゆえに、自ら作り上げた正しさのルールに閉じ込められ、身動きが取れなくなっているケースに何度も出会います。

常に完璧であるべきだ。絶対に人に迷惑をかけてはならない。親なんだから、子育ては完璧にこなすべきだ。

そうした高いハードルを自分に課し、少しでも達成できないと「なんてダメな人間なんだ」と自分を責め続けてしまう。こうした思考の癖が何年も続いているなら、少し立ち止まって考えてみてほしいのです。

あなたが頑なに守ろうとしているその正しさ自体が、あなたを内側から痛めつけるルールになってはいないでしょうか。

そのルールは、幼い頃に親から取り込んだ価値観

心理学では、頭の中の厳しい声の多くは、幼少期の成育環境、主に親の養育態度や価値観によって、無意識のうちに身についたものだといわれています。

自我がまだ芽生えていない子どもは、自分だけの力で社会の正解を見つけることはできません。そのため私たちは皆、親の生き方や考え方をそのまま自分の基準として取り込み、人間関係のルールを学んでいきます。もちろんその時点では親側に悪気があるわけではなく、それも「よかれと思って」というような愛情の一つの形だったのでしょう。

ただ、世間体を過剰に気にする環境で育つと、子どもは常に手のかからない聞き分けの良い子であることを求められます。そうした環境に適応するうちに、自分の本音を押し殺し、親の期待に応えることだけが唯一の正しい生き方だと信じ込んだまま、大人になってしまうことがあるのです。

感情のすり替えに気づくこと

こうして親の価値観を取り込んでいく過程で、もうひとつ大切なことが起きています。自分の本当の感情を、無意識のうちに別の感情にすり替えてしまう反応が身についていくのです。

特に子どもにとって、深い悲しみに耐え続けることは不可能です。そのため、求められることに答え続けているのに、自分の思いは一向にわかってもらえなくて悲しいという本音を、「親だって自分の為に言ってくれているんだから、理解を欲しがる自分は間違っている」といった感じで変換する癖がついていきます。そう考えれば悲しいと思わずに済むし、何よりも親の意向を受け入れれば、その場は平和に収まるからです。

このように感情をすり替えてきたことは、当時のあなたにとっては有効な生存戦略でした。しかしその代償として自分の本当の思いがわからなくなり、大人になっても役割ばかりを優先して、虚しさに襲われるようになってしまっているのではないでしょうか。

自分を大事にしよう、自己肯定感を上げよう。世の中に溢れるこれらの言葉に、どこか違和感を感じるとしたら、それはあなたの感覚が正しいのかもしれません。そもそも本音をすり替えることで生き延びてきた人にとって、自分を大事にすることは、簡単にできる話ではないからです。

技術的な苦手さと愛情は、別物でいい

そして、この癖が最も苦しいものとして現れるのが、子育てや家族関係などの役割を担ったときです。感情をすり替えることで日常はやり過ごせても、親や配偶者という役割は24時間続きます。本音を抑え続けることへの限界が、より鮮明に出やすいのです。

子どもは可愛いけれど、子育てがどうしても苦痛に感じてしまう。私は子どもが苦手なのかもしれない、と自分を追い詰めてはいませんか?

愛情と技術的な得意・不得意は分けて考えてみてください。料理が苦手でも家族においしいものを食べさせたいと願えるように、子育てという作業が苦手であっても、子どもを深く愛していることは十分にあり得ます。

子どもの心に影響を与えるのは、親の不器用さそのものではありません。問題になりやすいのは、正しく育てなければという重圧を抱えた親が、いつも張り詰めた状態でいることです。子どもはその緊張を、自分がいるから親が苦しそうにしていると察知し、やがて自分を犠牲にして親の期待に応えようとする苦しいルールを作ってしまいます。

最初の感情をキャッチする

では、どうすればこの苦しいルールの連鎖から抜け出せるのでしょうか。

ここで言う自分を大事にするということは、立派な人間になることではありません。長年すり替えてきた、一番最初に出てきた感情、つまりあなたの本音を尊重してあげることです。

悲しいときは、無理に笑わずちゃんと悲しむ。嫌なときは、理由を後付けして自分を納得させず、ちゃんと嫌がる。子育てで苦手なことがあるなら、ちゃんと認めて受け入れる。

正しい方法を学ぶことよりも、今の自分のままでいいと不完全さを許し、少しでも穏やかな気持ちを取り戻すこと。親が張り詰めていない状態でいることが、子どもにとって一番の安心になるからです。

もし、隠してしまって見えなくなった感情を見つける作業を一人で進めるのが難しいときは、いつでも話を聞かせてください。他人の目を基準にした正しさではなく、あなたがあなたらしく生きるための納得感を、一緒に探していきましょう。

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役割の重圧から少し解放されたら、次は「今の職場や環境がどうしても合わない」と苦しんでいる時の、環境と特性のミスマッチについて考えてみましょう。 ⇒ 【職場に馴染めず苦しい時|環境が合わないのは弱さじゃない】

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