2023-10-05

子供が苦手/子育てが苦手

子供が苦手と子育てが苦手を混同しないで

子供が苦手という人はいますし、それ自体は仕方ないこととして受け入れるしかないのかもしれません。そういう意味では『子供が苦手だから子育ても苦手』はわからなくもないのですが、愛情はあるけど『子育てが苦手なのは子供が苦手だから』は思い込みの可能性もあるので、一度整理してみる必要があります。

■何故整理が必要なのか?

子供の自我形成上決定的に悪い影響が出るのは、自分の親が自分を愛していないと感じる経験があったときです。影響が大きい場合には、愛着障害複雑性トラウマに端を発した様々な問題に大人になってからも苦しむ可能性がありますし、影響が限定的なものだとしても、気質や性格に繊細過ぎたり過敏すぎる一面が現れたりして、「生き辛さ」「精神的疲労感」を感じる日が多くなることもあるでしょう。繰り返しますが、これらは子供がそこに愛を感じられなかった故に起きる悪影響です。(私は愛していたと主張される方も多いのですが、親が愛していたかどうかが問題というより、子供がそう感じ取れていなかったのが問題ということです)

一方で「自分のことを愛してくれてはいるけど、お母さんは仕事や家事で余裕がないんだな」とか、「私のために頑張ってくれているけど、不器用なんだろうな」という風に、たとえ何らかの問題があるとしても子供に愛情が伝わってさえいれば、そこまで大きな問題になることもなく(それなりに紆余曲折や衝突はあるでしょうが)安定感のある大人になっていってくれるものです。

しかし愛情はあるのに「何も上手くいかないから子育てが苦手だし、もしかしたら子供が苦手なのかも…」と思い込んでいる親は、日々の生活で疲れているうえに、無理をして苦手さを見破られないようにしたり、こうすれば正しく育つといった情報を取り入てうまく育てようとし過ぎたりするので、ストレスが蓄積しすぎて感情的になることが多いのではないかと思います。要するに子供にピリピリ感が伝わってしまうようなことが多くなるのではないかと思うのです。

問題はこの慢性的にピリピリした感じが子供に伝わると、子供は『自分の存在が迷惑をかけているのではないか?』と受け取ってしまいがち、ということです。言い換えると、初めに書いたように【自分の親は自分を愛していない】あるいは【親は私が気に入らないから矯正しようとしている】と感じてしまう可能性が生まれるのです。

子供に対する愛情があるのに、愛情がない場合の傾向が出てしまっては、親として悔やむに悔やみきれません。ですから『子育てが苦手なのは子供が苦手だから』という思い込みを一旦整理しておく必要があるのです。

■愛情はあるが子育てが苦手なら

「誰だって親は初めての経験だ」「初めて子供を育てるのだからわからないことがあって当たり前」とはよく言われることだと思います。私もその通りだと思っています。では何が問題なのかというと、世の中全体の流れとして「子供はこういう道を歩むのが正しい」といった正論が強固に存在し続け、多くの親がぼんやりとだとしても「そうでなければいけない」と思い込んでいることです。

心理学の世界には「人は今までに経験したことしかできない」といった捉え方があるのですが、当然ながら初めて子供を育てる場合に参考になるのは【自分がどう育てられたか】という経験です。また中にはその育て方が気に入らないからと違う育て方をする人もいます。しかし実際のところは、どちらを選ぶにせよその育て方が子供に合っていれば大した問題にはなりません。

問題となるのは「子供の特性や気質に合っていない方法」を押し付け矯正しようとした場合です。最近は多様性という言葉が流行っていますが、当然ながら子供にも千差万別な傾向があります。子供という外見は同じでも、気質や傾向は皆違うのです。そこを見ずに【正しいとされる道】あるいは【多くの人がやっている方法】を押し付けていては、上手くいくものも上手くいかなくなってしまいます。

その結果、子供からすれば、【自分がダメな人間だから矯正されている=本来の自分には価値がない】と感じることで自己否定傾向が強化されたり【親が安心したいから、自分はその道具にされている】と嫌悪感を抱き対人不信の傾向を持つようになってしまうのです。

今や子供の育て方には様々な形があり、大人になるにあたっても様々な道があることがわかっています。ですから理由は様々であれど、子育てが苦手だと自認したり、自閉スペクトラムを疑う前に、まずは子供を理解する方法を学び、その上で必要な知識をつけて練習してみませんか。探してみれば理解の仕方や必要な知識をその道の専門家の助けを借りつつ身に着ける方法も見つかるでしょう。

最後に一つ。その過程で親自身も何らかの精神的な問題を抱えていることがわかる場合もありますので、そのときにはカウンセリングを利用するのもひとつの方法です。親から受けた影響で苦しんでいる人たちの話を数多く聞く一方で、どうすればそれを回避できるかという相談にも対応していますし、貴方が何も悪くないことも理論的にご説明することはできますので、一度ご検討ください。

とにかく、子供は日々成育環境の影響を受けながら成長します。その中で親が子供に合った環境や方法を提供することは、子供の人生に関わる大事な親の責任かと思います。そこに愛情が存在しているのであれば、上手くいっていないことを「自分の責任だ」なんて思いこまずに、知らないことがあるからだと考えて、いろいろ探ってみてくださいね。


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