2018-01-15

精神的な嫌がらせをする人

モラルハラスメント(精神的嫌がらせ)をする人

恋人・友人・夫婦・親子・職場・学校などで人間関係に悩む人は多いと思います。「人の悩みのほとんどは人間関係だ」という心理学者もいるくらいですから、皆さんも今までに何度かそういう悩みを持ったことがあるかもしれませんね。

今日はその原因のひとつとなる、精神的な嫌がらせをする人についての話。

それは、モラルハラスメント(精神的な嫌がらせ)という言葉で説明される状況を起こす人のことです。普段からこの種類の相談は多いですが、一方でクライエントさんは「私にも悪いところがある」「怒る理由がわからないわけではない」といった反省を口にする傾向もあります。

しかし残念ながらモラルハラスメントの場合、相手の嫌がらせは反省を伝えたところで収まるものではありませんし、一旦落ち着いても、次の新しい問題について攻撃を仕掛けてくるという繰り返しになることが多いです。では、どうすればいいのでしょう?

状況は様々ですから万能な対処法を書き記すことはできませんが、被害を受けているのなら、ひとつだけ知っておいた方がいいことがあります。それは、精神的嫌がらせをする人は、その行為にあまり罪悪感を持っていない(最下部に補足)ということです。なぜなら、精神的嫌がらせをする人は、多くの場合自己愛的な傾向の持ち主だからです。それは自分の存在価値・権力・能力・正当性を、相手が認め賞賛することで安心や満足感を得る人たちのこと。客観的にはどんなに酷く見える方法でも、本人は自分が正しいと信じていますから反省を伴わないのです。(そのひとつが、自分には敵わないと思い込ませたり、愛情ゆえの厳しい叱責だと思わせることで、相手に「自分が悪いかも?」と反省させるような巧みなテクニックです)

以下は、DSM-5(精神疾患の診断と統計マニュアル第五版)の、自己愛性人格障害の診断規定です。5つ以上当てはまれば人格障害と診断されますが、ここでは、自己愛的な性格の持ち主の傾向を知るための参考資料として紹介します。(上記の傾向の人が全て人格障害だということではありません。自信が無くプライドの高い人にも同様の傾向がありますし、他にも可能性はあります)

  1. 自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)。
  2. 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
  3. 自分が“特別”であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係すべきだ、と信じている。
  4. 過剰な賛美を求める。
  5. 特権階級(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)。
  6. 対人関係で相手を不当に利用する(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。
  7. 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
  8. しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
  9. 尊大で傲慢な行動、または態度。

6番以降の項目は、専門家ではない人から見ても思い当たる部分があるのではないでしょうか?

もちろんどんな人でも時にはこういった傾向を持ちますし、実際に誰かを傷つけてしまうこともあるでしょう。しかし、自己愛的な性格を持つ人との大きな違いは、それをした後に自分も傷ついたり、深く反省することです。先にも書きましたが「自分にも悪いところがある」という感覚を持てることです。

また、精神的嫌がらせをする人は、「自分も悪い」と強くは抵抗しないような繊細でおとなしい人、言い換えると満足感を得やすい相手を見つけてその性格を利用するのにとても長けていることも特徴です。

無意識とはいえ、こういった戦略的背景を持ち、自己満足が一番の目的の(場合によっては精神疾患と捉えられる)相手に対して「話し合って分かりあいたい」「本当はどう思っているのか教えて欲しい」「自分の正しさを認めさせたい」というアプローチが成功することは、残念ながら稀でしょう。彼らにとって相手の正当性を認めることは、自分が負けることに等しいからです。ですから、それを押し付ければ更なる攻撃を仕掛けてくる可能性が高まります。

(もう少し付け加えると、世の中で問題となっている【DV】【ストーカー】【毒親】と呼ばれる人たちも、自己愛的な傾向の持ち主です。そういった例からも、話し合って分かり合うことの難しさがわかっていただけるでしょうか…)

精神が歪んだ世界では「話せばわかる」が通用しないことが多々あります。例えそれが正しいとしてもです。ですから、そういったことに巻き込まれたときに、自分は間違っていない!と心が壊れるまで耐え続ける必要はありません。相手はそれを悪いことだと考えもしないからです。可能であれば同僚や上司、あるいは更に上の上司や専門の部署(無ければ人事など)に冷静に状況を説明して対処してもらえるか確認しましょう。

また、相談する相手がいない、相談してもあまり真剣に対処してもらえないという可能性もありますので、その場合は休職や転職も視野に入れることをお勧めします。ハラスメントに耐え続けて壊れてしまった人が、対人不安で社会復帰が難しくなる例を何度も見てきましたので、あなたが間違っていないことは重々承知の上での提案です。(そういったことに巻き込まれやすい場合は、一度ご自身の傾向と向き合うことも有効です)

現代社会では、他人を破壊してしまうような心の闇を持つ人間は、そこここに存在しています。思いがけず出会ってしまった上に、周りの協力が得られない場合は、自分が壊れてしまう前に、できるだけ早い段階で専門機関に相談して欲しいと思います。


※罪悪感についての追記(2020/09)

罪悪感を持たないとは、振り返り(反省)をしないということです。「もしかしたら自分が悪かったかもしれない」と考えられるのは、罪悪感があるからこそ。罪悪感がなければ勝つか負けるかだけにしか興味がありませんし、『自分は本当に正しいか?』についての検証もしません。自分はいつも正しいと考えています。

また、罪悪感の無い人にとって「自分も悪いかもしれない」と考える罪悪感の持ち主はとても相性のいい相手です。なぜなら強く攻め続ければ、勝手に反省して負けてくれるからです。こういった理由において、モラハラをする人は罪悪感を持ちやすい人をターゲットにしたがるということになりますし、勝つ快感を求め続けますから、一つのことが終わっても、あなたを解放してはくれません。

勝つことが目的ですので、そのためには何でもやれるというのも特徴です。泣くことも、優しくなることも、落ち込んでみせるのも、すべて勝つため(あなたに罪悪感を持たせるため)だということを忘れないようにしてください。

※追記の内容は主に人格障害の傾向です。ただし、モラハラを繰り返す人が短期的に改善することは難しいと考えて対応法を考えるのは、どの場合も重要かと思います。


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